□ジャングルでの不思議体験
ジャングルを逃げていた時、押しても前に進めない事があったんです。足も動かないし。いったん休憩して、また押してみたら何もなかった。その時に“ぬりかべ”っていうのはいるんだなと。実際にそれを感じたのは、2〜3回くらいかな。

※「ぬりかべ」とは
妖怪軍団一の力持ち。淋しい夜道を歩いていると突然前へ進めなくなる事がある。それは、ぬりかべが立ちはだかっているからなのだが、それ以上の悪さはしない。

□戦地でのスケッチ
戦争に行けば、絵とかそういう事に神経がまわらないからマイナスでしたね。戦地で描いたスケッチは片腕を無くしてからのものです。
同じように負傷した兵隊は小屋みたいな所に集められて住むんだけど、ひとつの村が出来るほど負傷者は大勢いましたね。負傷兵は労働が出来ないでしょう。だからそのまま放置されて時間があるんで、その時に描いたんです。

□ラバウルでの原住民生活
現地は気候が暖かいから自然に毎日が楽しい訳。熱帯だからバナナでも何でも直ぐになる。
バナナの青いやつは甘みがないから焼いて食べるんだけど、パンみたいなの。1年に1回位は犬や豚の肉を食べたりするかな。気候のせいもあって、向こうの人は真面目に働かなくても最低生活が出来るから、日本人と比べて怠け者。日中は暑いので、夕方と朝にちょっとだけ働くの。バナナ焼いて芋とか野菜がおかずで、暮らすのに働く必要がないんだよね。
そういう彼らの生活は水木さんにぴったりで、本気で島に残ろうと思ったくらいだった。

※「ラバウル」とは
第二次世界大戦に召集された水木しげる氏が最終的に送り込まれた、日本軍の南東方面作戦の最重要根拠地(もっとも危険な激戦地)。戦後、ラバウルの町は再び美しい町並に再建されたが、現在でも日本軍の地下要塞の一部等が残っている。