一人っ子で親も店(共働き)をやってたんで、暇な時間が凄くあって。だから当時は絵を描いたり、アニメ(テレビマンガ)をずっと観てましたね。小説や映画も情報誌を読んでたので、「『2001年宇宙の旅』なんて映画があるんだ。宇宙船って面白いな〜」「ディスカバリー号(宇宙船)って、母星が地球だからあれは精子の形をモチーフにデザインされてるんだ。で、精子って何?」みたいな。小学生には分からないんですけど、形は面白いからモチーフにして描いてみたりして。宇宙戦艦ヤマトも格好良いなと思っても、当時のプラモ(プラモデル)は出来が悪くて格好悪いんですよ。
当時はガンプラ(ガンダムのプラモデル)もないから、買ってきたプラモを真白く塗って自分で戦艦ぽく創ったりと、マンガやプラモ、玩具、そんな事ばっかりでしたね。当時のテレビってサブカルチャーっていうのかな。ぐっちゃぐちゃで面白かったし、その影響を受けてるんでしょうね。よく、こっちのSF映画とこっちのマンガをミックスしたり、こっちのプラモとあっちのプラモをミックスさせたりして絵を描いてましたよ。当時は雑多なんだけど、今みたいに情報量がないから飢えるわけですよ。何もないから自分で作るしかない。自分で考えて楽しもうとね。
 
 
 
 
思春期の頃はモテたいからファッションや音楽に興味を持つようになって、今でいうフリーターという奴でしたね。いつかまともになろうと思ってた時に始めたのがアニメーターの仕事。描いてみたら「できるじゃん、じゃ来て」といわれ、当時、1枚50円とか70円の今だったら海外に出すような下請けの下請けの仕事。あっさりした顔でも複雑なのを描いても70円。それ1枚描くのに1日じゃ終わらないから、最初の頃は大変でしたよ。オリジナルビデオアニメーションが出始めて、単価もちょっと高くはなったんですけど“高い=うるさい”なんですよ。バリバリ伝説(1983年発表:しげの秀一バイク漫画作品)とかでコーナーを攻めてる所を描くんですけど、やっと出来上がったやつを「コーナーを攻めてると、タイヤが熱を発しゴムが磨耗して飛び散ります。ちゃんと描きましょう」とかいわれて描き直しだし。でも、食えねえからガンガン描くしかない。だから腕は上がりますよね。その辺りで、「あ〜、パースってあったよな(※1)」「デッサンってあったよな」と、絵の面白さを思い出したというか。

(※1)
2〜3才の頃に父親が絵の具で描いてくれた車の絵にパース(立体的に描く)がついていたんです。
その時に「なるほど」と分かっちゃったんですよ。それ以降、小学生の頃の絵日記とかもドラマティックに描いてましたね。
 
 
 
 
アニメータの仕事をやってた頃にゲームとか流行り出したんです。その頃は彼女が家に来ても、1枚70円の仕事をしてるんで遊びたいけど遊べない。邪魔されても困るんで、ファミコンを彼女に買ってきたら逆にハマッちゃった。それまで人間の持つ自由度って無限大にあると思ってたから、テレビゲームをバカにしてたんです。でもやってみると意外に自由度が高い。感激してどんどんやるようになって、その中で結構ハマッたゲームが「女神転生(メガテン)」だったんですね。
その後、アニメーターの仕事が急に減って食えなくなって「ゲーム屋さんが絵描き募集してるらしいよ」というんで、あちこちの会社を覗いてみた。絵描きといってもコンピュータが分からないのに大丈夫かなというのはあったんですが、意外にどこでも「来てください」という感じで。たまたまその中の会社のひとつにアトラス(※2)があって、「実はメガテンはうちで創ってたんですよ」という話になって、一番水が合ったんですよね。

(※2)株式会社アトラス
1986年、コンピュータゲームソフトの商品開発を主業務として設立。家庭用ゲームソフト「真・女神転生」シリーズ、「ペルソナ」シリーズ、「魔剣」シリーズ等を制作・販売。またプリント倶楽部等の業務用アミューズメントも手掛ける。
 
 
 
 
僕は絵の描き方を知らなかったから、最初はすごくコンプレックスあったんですよ。今はコンピュータというツールを介した所で色んな事ができるけど、やってる事は紙に描く作業と一緒。そのうち皆コンピュータを使って絵を描く事になるだろうけど、逆に気をつけないと偶然出来たものをアートと呼んでしまう。使う意味もあるけど、頭の中で考える構図を形にできないと意味がないよね。コンピュータならではの作業も上手く使いこなして、そういう表現方法もあるという事を理解してもらえたらいいかな。
デジタルの世界っていうのは、電気がなくなった瞬間に見れなくなる。CD-ROM(記憶媒体)もあるけど、劣悪な環境だとすぐダメになって5年もてばいい方。そう考えると紙や石はすごいな。だから版画は、職人さんがちゃんと仕事をしてくれて形として残せたのはよかった。パッケージやポスターは原画をトリミングしてしまうけど、実はあえて見えない部分まで(デジタルは拡大して描けるから)描いてるんだ。でも版画だとその部分も見れるから、腕時計の文字盤の中とかもしっかり描き込んだりしてね。
今後の描き下ろしの作品は、一応悪魔絵師なんで、それを生かしつつでかいものとかやってみたいですね。
 
 
 
今回のプレゼント番号

金子一馬サイン色紙
s110203